相続放棄

こんなお悩みはありませんか?

相続放棄に関するこのようなお悩みはありませんか?

  • 親族が亡くなったあと多額の借金が発覚した
  • 音信不通だった親が亡くなったと連絡があったが、かかわりたくない
  • 相続放棄をしたいが、手続きに不安を感じる

当事務所に依頼するメリット

当法律事務所では、相続放棄の手続きをスムーズに進めるためのサポートをいたします。
専門家があなたの状況に応じた最適なアドバイスを分かり易く説明いたします。
まずはお気軽にご相談ください。

相続放棄のケーススタディー

people

ご相談内容

父が亡くなり、相続の手続きを進めようとしたところ、父が多額の借金を抱えていたことが判明しました。プラスの財産よりも借金の方が多い状況です。相続放棄を検討していますが、手続きの方法や期限について不安があります。

無料相談でのご提案

以下のようなことに注意して相続放棄の手続きを進めることをお勧めします。
・相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する
・申述に際して戸籍などの必要書類があるので早めに収集する
・父の遺産には手をつけない(預貯金を解約したり、不動産を名義変更したりしない)
また、相続放棄後の債権者への対応や、他の相続人への連絡方法についてもアドバイスいたします。

ワンポイントアドバイス

・相続放棄は一度行うと原則として取り消すことができないため、慎重に検討しましょう。
・被相続人が亡くなってから3か月経過後に借金が発覚した場合でも、相続放棄をすることができる可能性があります。弁護士にご相談ください。
・相続放棄をしたとしても、相続財産を占有している場合には、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、管理義務(保存義務)が生じるため注意が必要です。

相続放棄 弁護士費用

相続放棄 11万円(税込)
1名追加ごとに5万5000円(税込)を加算
※実費は別途必要です。
債権者対応 1社2万2000円(税込)
※同一の債権者に対しては相続人が複数であっても当該金額で対応します

まずはお電話でお話ししませんか?

お電話だけの方も大勢いらっしゃいますので、どうぞご安心ください。
弁護士と話をしてみると、それだけで何らかの糸口が見付かることもあります。
お一人で悩まず、ぜひ無料法律相談の窓口を上手に利用なさってください。

土日受付可(翌営業日以降対応)夜間対応可(要事前予約)即日相談可能な場合あり
受付時間|10:00~18:00

遺言・遺産相続のご質問やお問い合わせはこちらから 24時間受付中 まずはお気軽にお問い合わせください
まずはお電話でお話ししませんか?簡単にお話をお聞きして、簡単なアドバイスをさせていただきます。お電話だけの方も大勢いますし、お役に立てそうであれば60分無料の面談をお勧めさせていただきます。土日・夜間・即日相談可能 0120-954-796 受付時間|10:00~18:00遺言・遺産相続のご質問やお問い合わせはこちらから 24時間受付中 まずはお気軽にお問い合わせください

相続放棄とは

相続放棄とは、亡くなった人の財産(権利・義務)を一切引き継がない旨の意思表示のことです。亡くなった人に多額の借金がある場合など、債務超過の状態で相続が開始したときに選択されることが典型的です。もっとも、相続放棄をすると、消極財産(借金などの義務・マイナスの財産)だけでなく積極財産(不動産・預貯金などの権利・プラスの財産)の両方を引き継がないことになるため、相続放棄をするか否かの選択は慎重に行う必要があります。

相続開始時の3つの選択肢

相続人となる人には、亡くなった人(被相続人)の財産(権利・義務)を承継するかどうかについて、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの選択肢があります。被相続人に多額の借金がある場合のように、相続による財産の引き継ぎが相続人に不利益をもたらすこともあり得ますが、「相続放棄」は、そんなときのために用意された制度です。

単純承認

単純承認とは、責任を限定せず(無限に)、亡くなった人の財産(権利・義務)の一切を引き継ぐことをいいます。法的には意思表示であると考えられていますが、民法921条各号に定められた事項に該当した場合(たとえば、何もせずに熟慮期間を経過するなど)は「単純承認をしたものとみなす」とされていることに注意が必要です(法定単純承認)。

相続放棄

相続放棄とは、亡くなった人(被相続人)の財産(権利・義務)を一切承継せず、被相続人の相続について、初めから相続人でなかったものと取り扱ってもらうための制度です。相続放棄をする場合には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述をしなければいけません(熟慮期間)。相続放棄をした場合は初めから相続人にならなかったものとみなされますので、次順位の相続人(たとえば、被相続人の子(全員)が相続放棄をした場合には、被相続人の親や兄弟姉妹)が財産を引き継ぐことになりますが、相続放棄をした人の直系卑属への代襲相続は発生しません。

限定承認

限定承認も承認の一種ですが、亡くなった人(被相続人)の財産(権利・義務)を承継するものの、相続人が相続によって得た積極財産の範囲内でのみ債務(消極財産)を支払うことを条件とする旨の意思表示です。限定承認は相続人全員で行う必要があり、かつ、手続が複雑・煩雑であることから、現実に利用されているケースはあまりないといえます。債務超過であることが確実視される場合は、「相続放棄」を選択しておくことが賢明でしょう。

相続放棄申述の熟慮期間

自己のために相続の開始があったこと(つまり、被相続人の死亡と、それにより自分が相続人となったこと)を知った後の3か月間は「熟慮期間」と呼ばれ、この期限を過ぎると、家庭裁判所に相続放棄の申述を却下されてしまいます(そもそも手続を受け付けてもらえない、ということです)。

そうであるとすれば、「熟慮期間」のカウントダウンはいつから始まるのか?ということが非常に重要な問題となります。つまり、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、具体的にどのような時を指すのか、ということです。
この点、相続は被相続人の死亡により開始しますので、誰かが亡くなったことを知れば、その時からカウントダウンが始まってしまうように思われるかもしれません。
もっとも、配偶者以外の血族相続人には相続順位があり、第二順位(直系尊属)、第三順位(兄弟姉妹)の相続人は、先順位の相続人が存在しないときに初めて相続人となります。ですから、ご自身が第一順位の相続人(被相続人の子またはその代襲者)でなく、第二・第三順位の相続人である場合は、被相続人の死亡だけでなく、「先順位の相続人がいないこと」をも知らなければ、「自己のために相続の開始があったことを知った」とはいえないのです。

さらに、「相続の開始は知っていたが、債務(消極財産)の存在は知らなかった」というパターンにも注意が必要です。
この場合、被相続人の死亡や、それにより自分が相続人となったことは知っているわけですから、それらの事実を知った時から3か月の熟慮期間が経過してしまえば、相続放棄はできない(申述が却下される)ように思われます。
しかし、最高裁昭和59年4月27日判決は、以下のように判断し、特別な事情があれば、カウントダウンの始まる時点(起算点)が遅くなることを認めているのです。
「熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実(注.相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実)を知った時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から三か月以内に限承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」
そして、このような判例の存在を前提とすると、その次には、個々のご家族・ご親族の事情に応じて、「どのような場合に熟慮期間の起算点の繰り下げが認められるのか?」ということが当然問題となってきます。

このように、単に民法の条文だけを眺めていても分からない解釈や、実務(裁判所)の運用など、専門家でない皆様には把握しづらい情報が様々に存在しますので、一見単純・簡単なように見える相続放棄の手続も、弁護士にご相談・ご依頼をいただくことが有益であると考えます。

相続開始から相続放棄の手続きをするまでの流れ

相続放棄の手続は、相続人・相続財産の調査から始まり、必要書類の準備、家庭裁判所への申述、家庭裁判所からの照会に対する回答、相続放棄申述受理通知書の受け取り・・・と進行してゆきます。一般的に相続放棄は債務超過の場合に選択する手続ですので、相続財産の調査を迅速・確実に進めることが特に重要であるといえます。

相続財産の調査

債務超過であるか否かを判断するためには、積極財産(プラスの財産、権利)と消極財産(マイナスの財産、義務)の状況をできるだけ正確に把握することが大切です。財産の種類ごとに一般的な調査方法を挙げると、次のようになります。

預貯金

預貯金口座の情報がわかるもの(預貯金通帳・キャッシュカード・各種預金証券など)がお手元にある場合は、口座開設先の金融機関から被相続人の死亡時の残高証明書と取引履歴明細書を取り寄せます。取引履歴の明細(金融機関ごとに呼称は様々です)は、金融機関によって照会・取得できる期間が異なりますが、被相続人の生前の預貯金の動きを確認したい場合には、できる限り古い時点まで遡った履歴を取得することが一般的かと思われます。また、このようにして取引履歴の明細を取得すると、その明細の中から入出金先として未知の金融機関の情報を発見できることもあり得ます。
なお、預貯金についてまったく情報がない場合には、いわゆる大手の都市銀行やゆうちょ銀行に対してひとまず網羅的に照会を行ったり、被相続人の居所・住所・職場の所在地などを手掛かりに、その地域の金融機関の支店等へ照会を行うなどして、預貯金の有無や内容を確認してゆくことになります。

不動産の調査方法

不動産の所在を確認するための資料は土地・建物の全部事項証明書(登記簿謄本)ですが、これを取得するためには、いわゆる住所(住居表示)ではなく「地番」を把握する必要があります。そして、住居表示と地番の対応関係を調べるためには、ブルーマップと呼ばれる地図を調べたり、インターネット上で登記情報提供サービス内の「地番検索サービス」を利用するといった方法がありますが、一般の皆様にとって最も簡単な方法は、「その住所を管轄している法務局に電話で聞く」というものかもしれません。
また、所在や住所が全くわからない不動産を被相続人が所有している可能性もありますが、その場合には、その不動産が所在する(所在していそうな)市区町村役場で「固定資産税課税台帳」(いわゆる「名寄帳」(なよせちょう))を取得してみる必要があります。なお、被相続人に対して固定資産税の納税通知書や課税明細書が届いていれば、それらが所有不動産の重大な手掛かりになりますが、納税通知書や課税明細書には非課税の物件が記載されていないことが多いため、そのような物件の存在をも特定するためには名寄帳を取得するしかない(さらに、市区町村によっては名寄帳にも非課税物件が記載されていないことがある)、という点には注意が必要です。

証券口座(株式・社債・投資信託等の有価証券)の調査方法

被相続人に対して証券会社等から様々な通知が届いていることが多いかと思われますので、調査の手掛かりは掴みやすいかもしれません。その他には、預貯金口座の取引履歴の中に証券口座への入出金が記載されていたり、配当金等の入金が記載されている場合も考えられます。また、確定申告書の控えに証券会社の特定口座年間取引報告書・支払通知書が添付されていることもあります。さらに、被相続人が株式等の有価証券を保有していたらしいことは分かるものの、その証券口座の手掛かりが全くないような場合には、「証券保管振替機構」(ほふり)に開示請求を行うことも考えられます。

債務の調査方法

借用書・金銭消費貸借契約書や領収書といった証拠があるもの(その他、債権者から督促などの通知が届いているもの)については、債権者に直接問い合わせをして債務の内容を確認することになるでしょう。また、証拠・書類がない場合でも、預貯金口座の通帳や取引履歴の情報から債権者を特定できることがあります。さらに、そういった手掛かりがない債務については、株式会社日本信用情報機構(JICC、主な加盟企業は消費者金融)、株式会社シー・アイ・シー(CIC、主な加盟企業はクレジット会社)、一般社団法人全国銀行協会(JBA・KSC・全銀協、主な加盟企業は銀行)といった「信用情報機関」に対して情報開示請求を行うことになります。

必要書類の準備

家庭裁判所へ相続放棄の申述をする際は、相続放棄の申述書のほか、戸籍や住民票の除票(戸籍附票)などの添付書類を準備する必要があります。
申述に際して常に必要な書類(共通書類)は以下のとおりです。

  • 相続放棄の申述書(家庭裁判所で入手して記入)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人(=放棄をする相続人)の戸籍謄本(全部事項証明書)

さらに、相続放棄をする人(申述人)と被相続人との続柄に応じて、以下のように異なる添付書類が必要となります。
なお、第二順位・第三順位の相続人(やその代襲相続人)が相続放棄をする場合、先順位の相続人等が既に裁判所へ提出した書類は添付不要とされていますが、その上でも取得すべき戸籍類は膨大な量になってしまうことが多く、専門家でない一般の方々には相当な負担になると考えられます。

申述人が被相続人の配偶者の場合

・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の子またはその代襲者(孫、ひ孫等)(第一順位相続人)の場合

・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


[代襲相続人が申述人である場合]
・被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の父母・祖父母等(第二順位相続人)の場合

・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


[被相続人の子(およびその代襲者)が死亡している場合]
・その子(およびその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


[被相続人の直系尊属(※)が死亡している場合]
※申述者より下の代の直系尊属に限る(例:祖父母が申述者の場合の父母)
・その直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の兄弟姉妹およびその代襲者(甥・姪)(第三順位相続人)の場合

・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


[被相続人の子(およびその代襲者)が死亡している場合]
・その子(およびその代襲者)の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

・被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本


[申述者が代襲相続人(甥・姪)の場合]
・被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

家庭裁判所への申述

必要書類を揃えたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所(管轄裁判所)に提出します。このとき、申述費用として申述人1人につき収入印紙800円分を申述書に貼り付ける必要があり、さらに、各家庭裁判所が定めた金額分の連絡用郵便切手(予納郵券)を納める必要があります。なお、複数の相続人が同時に相続放棄をする場合、重複する添付書類は1通だけ提出すればよいとされています。

家庭裁判所からの照会への回答

必要書類を提出してからおおむね1か月以内には、家庭裁判所から照会書・回答書といったタイトルの書面が届くはずです。この書面は、申述人において相続の開始を知った日がいつであり、それがどのような日であるか(特に、被相続人の死亡後3か月を経過した後の申立てである場合)、相続放棄の申述が申述人の真意に基づくものであるか、相続放棄をする理由は何か、申述人が法定単純承認に当たる行為をしていないか、といったことを確認する目的で送られてくるものです。
この書面は、家庭裁判所が申述を受理するか否かを判断するための調査(事実の調査)の意味を有するものですので、回答内容には十分に注意を払う必要があります。

相続放棄申述受理通知書の受け取り

照会書・回答書への回答後、相続放棄の申述が受理されたときは、裁判所から相続放棄申述受理「通知書」が送られてきます。この書類は、相続放棄の申述が受理されたことを申述者に事実上知らせるための書類であり、相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されたことを「証明」する書類は「相続放棄申述受理証明書」です。「証明書」は自動的に送られてくるわけではなく、家庭裁判所に交付請求をして取得する必要があります。相続放棄の申述受理の審判は、申述書に申述を受理する旨を記載した時にその効力を生じるとされているため(家事事件手続法201条7項)、「通知書」を受け取ることが相続放棄の効力発生の要件となっているわけではありませんが、事実上は、この通知書の受け取りをもって相続放棄の手続きが完了するといえるでしょう。

相続人全員が相続放棄をするとどうなる?

相続人全員が相続放棄をすると、相続人が存在しないことになります(相続人不存在)。しかし、相続人は不存在でも、管理すべき預貯金や不動産などの積極財産(プラスの財産)が存在する場合もあり、このようなケースでは、相続放棄者や相続債権者などの利害関係人や検察官の請求により、家庭裁判所の審判で相続財産清算人が選任されることがあります(弁護士や司法書士の中から選任されることが多いでしょう)。
相続財産清算人は、相続財産を調査して財産目録を作成し、相続財産の清算業務を行って残余財産を国庫に帰属させます。清算業務の内容は事案によって異なり、相続財産を換価して債権者に按分弁済する場合、相続財産を換価して換価金の国庫に納付する場合、相続財産を特別縁故者へ分与する場合などがあります。

なお、上記の相続財産「清算人」は、改正前の民法952条で相続財産「管理人」と呼ばれていた制度になりますが、令和5年4月1日施行の改正民法897条の2では、現在の相続財産清算人とは別のものとして相続財産「管理人」の制度が新たに定められています。つまり、民法改正の前後で「相続財産管理人」という単語の意味内容が変わったことになるので、注意が必要です。
この点、相続放棄をした時点で相続財産を現に占有していた相続人は、相続放棄の申述が受理された場合でも、相続財産を相続人または相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保管しなければなりません(改正民法940条)。たとえば、多額の債務を抱えた配偶者が死亡したため、相続を放棄したものの、その時点ではまだ配偶者の所有名義の不動産に居住していた場合などが考えられるでしょう。このような状況で財産の管理義務を免れようとしても、他の相続人が熟慮期間中であって引き渡しができないことなどもあり得ますので、そのようなときには、新しい相続財産管理人制度を利用すべきことになります。

相続放棄ができなくなる行為とは?

相続財産の調査が完了していない間(つまり、相続放棄をする可能性が少しでも残っている間)は、単純承認をしたものとみなされる事由(民法921条、法定単純承認事由)が発生しないように、細心の注意を払う必要があります。単純承認を撤回することはできませんので(民法919条1項)、法定単純承認事由に該当する事実が存する場合は、原則として相続放棄の申述を受理してもらうことができなくなります(却下)。法定単純承認事由の詳細は、次の通りです。

相続財産の「処分」(民法921条1号)

具体的にどのような場合が該当するのか、実務的には最も問題となることが多い事由です。法律的には、財産の現状・性質を変える行為のことであり、財産を売却するなどの法律行為だけでなく、物を壊すなどの事実上の行為も含むと解されています。他方で、財産の保全、すなわち現状を維持するために必要な行為は「保存行為」、財産の性質を変更しない範囲で改良・利用を目的とする行為は「管理行為」とされ、いずれも「処分」には該当しません。
また、「処分」に該当するためには、「相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要する」(最判昭和42・4・27)とされており(主観的要件)、被相続人が死亡したことを知らずに相続人が相続財産を処分した場合は民法921条1号の「処分」に当たらないとした判例があります(最判昭和41・12・22)。
それでは、どのような場合が「処分」に該当するのか、いくつかの例を見てみましょう。

遺産分割協議の成立

遺産分割協議は、相続財産の全容を把握した上でなされることが通常ですから、遺産分割協議が成立すれば、原則として相続財産の処分と評価されるでしょう。
もっとも、遺産分割協議が錯誤により無効となる場合や、自らが相続財産を全く承継することがないと信じて遺産分割協議書を作成した場合のように、特別な事情が認められるときには、ごく例外的に「処分」に該当しないと判断されることもあり得ます。

形見分け

「処分」に該当するか否かの判断においては、その対象が一般的経済価額を有するか否か(つまり、経済的な重要性があるか否か)という点も問題になります。そして、財産が経済的な重要性を有するか否かは、処分の対象となった物そのものの交換価値だけでなく、相続財産全体の価額、被相続人と相続人の財産状態や、その物に対して行った行為の性質等を総合的に考慮して判断されます。
そのため、たとえば相続財産全体が相当に多額・高額である中で、わずかな経済的価値しか有しない物品を形見分けの趣旨で持ち帰ったような場合は、相続財産の「処分」に当たらないと判断される可能性があるということになります。
なお、相続放棄の申述が受理された後の形見分けであっても、場合によっては民法921条3号の「隠匿」に該当すると判断されてしまう可能性があることには注意が必要です(後述)。

相続財産から葬儀費用の支払や仏具の購入を行った場合

葬儀は社会的儀式であり、仏壇や墓石を購入して死者を弔うことは我が国における通常の慣習であるという理由で、その金額が社会的見地から不相当に高額でない限りは「処分」にあたらないと判断される可能性がある・・・と解説されていることも多いかと思われます。
もっとも、これらの行為についての判断を下した裁判例は、支出した金額が非常に僅少であったり、相続人が相続債務の存在を知らずに支出した場合であるなど、いずれも特別な事情があったケースですので、「一般的な金額の葬儀や仏具の購入なら大丈夫」と安易に決めつけることは大変危険であると考えます。弁護士としては、ご葬儀や仏具のご購入をなさるのであれば、ひとまず相続財産には手を付けず、ご自身の(相続人の)財産からお支払をなさっておくことを推奨いたします。

生命保険金の受領

生命保険金の受取人が特定の相続人に指定されている場合や、抽象的に「相続人」と指定されている場合、当該生命保険金の受給権は相続人固有の権利であり、被相続人の相続財産に該当しませんので、これを受領しても「処分」には該当しません。
他方で、受取人が「被相続人」と指定されている場合は、保険金請求権がいったん被相続人に帰属して相続財産を構成すると考えられますので、これを受領することは「処分」に該当することになります。

死亡退職金の受領

被相続人が公務員の場合は法律や条例、一般企業にお勤めの場合は就業規則や退職金支給規則などにおいて、死亡退職金の受給権者がどのように定められているかを確認する必要があります。そして、死亡退職金の受給権者が定められている場合、その支給を受ける権利は受取人固有のもの(=死亡退職金は相続財産ではない)と考えられるため、死亡退職金を受領しても相続財産の「処分」には該当しないことになります。

債務の弁済

先にご説明したとおり、「保存行為」は相続財産の「処分」に該当しません。
そして、弁済期の到来した債務の弁済は「保存行為」に該当すると考えられていますので、被相続人の債務について『相続人の財産によって』弁済を行ったとしても、法定単純承認には該当しません。
※他方で、『被相続人の財産(相続財産)によって』債務の弁済を行った場合は、相続財産を費消する行為が「処分」に該当するため、法定単純承認事由となってしまうことに注意が必要です。

熟慮期間内に限定承認又は相続放棄をしなかったとき(民法921条2号)

この場合も法定単純承認に該当します。

相続財産の「隠匿」(民法921条3号)

相続財産の隠匿とは、限定承認や相続放棄をした『後で』、相続財産の全部またはその一部について、その所在を不明にする行為をいいます。
なお、限定承認や相続放棄の『前に』このような行為が行われた場合は民法921条3号の「隠匿」に該当せず、その行為が同条1号の「処分」に該当しない限りは法定単純承認事由とならないため、相続債権者としては、その行為で生じた損害があれば、不法行為に基づく損害賠償請求をするしかないことになります。
先にご説明した形見分けとの関係では、相続放棄の申述が受理された後であり、あくまでも形見分けのつもりでした行動であっても、経済的な重要性を有する相続財産を持ち去ってしまうことは「隠匿」に該当する可能性がありますので、十分に注意をする必要があります。

相続放棄を弁護士に相談・依頼するメリット

これまでにご説明してきたとおり、ごくシンプルに感じられる相続放棄の手続であっても、実はいたるところに専門家でなければ見逃しがちな落とし穴があります。
相続財産を迅速かつ確実に調査することは最低限の必要事項であり、その後も、熟慮期間のカウントダウン(起算点)を正確に把握した上で、法定単純承認事由を発生させないように気を配りつつ、ご自身の相続順位によっては短期間で膨大な量の戸籍類を取得しなければならず、家庭裁判所への申述を行った後も、裁判所からの照会に遺漏なく回答をする必要があります。
このような一連の作業を、普段のお仕事や生活に忙しくされている方々がミスなくこなすことは相当に難しく、気が付いたときには相続放棄ができなくなってしまっていた・・・というような事態も十分にあり得ます。
この点、弁護士であれば、相続財産の調査や戸籍取得の端緒について相続人の皆様にご協力をいただくことはありますが、基本的には全ての作業(特に家庭裁判所とのやり取り)を相続人の皆様の「代理人として」行うことができます。(※弁護士以外の士業は「代理人」になることができず、あくまでも必要書類の取得・作成支援にとどまることにご注意ください。)
正確・確実に相続放棄を行い、安心して普段の生活をお過ごしいただくためには、弁護士へのご相談・ご依頼に大きなメリットがあることを知っていただきたいと思います。
どなたかが債務超過(と疑われる状態)で亡くなられ、ご自身が相続人となった(あるいは、将来相続人になると思われる)ときには、ひとまず早急に弁護士へご相談をいただくことを強くお勧めいたします。

弁護士に相談・依頼をするメリット

  • 相続財産の調査を漏れなく行える
  • してはいけない行動(法定単純承認事由)を正確に把握できる
  • 手続を行う期限(熟慮期間)を正確に把握できる
  • 戸籍類などの必要書類を取得する極めて煩雑な作業から解放される
  • 家庭裁判所への申請書類(申述書)を正確・確実に作成してもらえる
  • 代理人として家庭裁判所からの照会等に的確に応対してもらえる(※特に重要です)
  • 解決事例-ケース紹介-
  • よくある質問Q&A
  • 相続ノート